コミュニティの声を聞く。
Vol.05
※本稿は、SSIR Japan 編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 02 社会を元気にする循環』より転載したものです。若杉忠弘 Tadahiro Wakasugiセルフ・コンパッション[新訳版]クリスティン・ネフ 著 Kristin Neff石村郁夫|樫村 正美|岸本早苗 監訳浅田仁子 訳金剛出版|2021セルフ・コンパッションとは、本書の著者、クリスティン・ネフによれば「自分にやさしくする力」です。自分へのやさしさというと、甘えや弱さと結びつけて考えてしまいがちですが、セルフ・コンパッションは勇気や強さを引き出す「錬金術」のようなものだとネフは述べています。本書で紹介されているネフの人生を追っていくと、セルフ・コンパッションの輪郭が見えてきます。ネフ自身が、セルフ・コンパッションによって、人生のどん底から救われている体験をしています。20代で最初の結婚が破綻し、自分を恥じる苦しい日々が続いていました。追い打ちをかけるように、在籍していた博士課程では論文の提出が遅れ、自分はアカデミックの世界でやっていけるのか、卒業したら仕事はあるのかと、不安、恐怖、そして自己嫌悪に陥っていました。自己批判を繰り返していた彼女を救ったのが、藁にもすがる思いで通った仏教の瞑想クラスでした。そこでネフははじめて、他人にやさしくするように、自分にやさしくすることを教わります。ネフは「ほんとうに自分にやさしくしていいのだろうか」と戸惑いつつも、セルフ・コンパッションを実践するうちに、穏やかな気持ちを取り戻していきました。この感情の転換こそがセルフ・コンパッションの核心です。ネフによれば、自分のつらい気持ちをありのままに受け止めると、心の深いところから自分を思いやる気持ちが湧き上がってくるといいます。そうすると、つらいという感覚に圧倒されるのではなく、そのつらさを包むやさしさとつながりを感じられるようになり、心が落ち着き、苦痛が和らぐのです。ネガティブな感情から穏やかさを生むのですから、まるで魔法のようです。実際、ネフはこの変化を次のように表現しています。
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