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デザイン思考 × ソーシャルイノベーション: 善意を空回りさせず、成果を生み出す方法

デザイン思考 × ソーシャルイノベーション: 善意を空回りさせず、成果を生み出す方法

人々の問題を解決するためにサービスを設計したのに、ユーザーから受け入れられない―この「善意の空回り」をどうすれば避けられるだろう? 「デザイン思考」は、丁寧な観察と深い洞察をもとにプロトタイピングを繰り返し、顧客の真のニーズに応える解決策を生み出す。複雑なニーズを紐解くソーシャルイノベーション分野で真価を発揮する、この方法論の活用法を示す。

※本稿はスタンフォード・ソーシャルイノベーションレビューのベスト論文集『これからの「社会の変え方」を、探しに行こう』からの転載です。

ティム・ブラウン Tim Brown
ジョセリン・ワイアット Jocelyn Wyatt

インドのハイデラバード郊外、住宅地と農村部の中間エリアに、1人の若い女性が住んでいる(ここではシャンティと呼ぶことにしよう)。彼女は毎日、自宅から300フィート(約90メートル)ほどのところにあり、いつでも利用できる近所の掘抜き井戸から水を汲んでいる。その際彼女は、頭の上に載せて簡単に運べる3ガロン(約11リットル)のプラスチック容器を使用している。シャンティと彼女の夫は、飲料水や洗濯に使用する水はすべてこの無料の水源から確保している。この水が、ナンディ財団(Naandi Foundation)が運営している地域の浄水施設の水ほど安全ではないという話は耳に入っているが、それでも使い続けている。シャンティの家族は先祖代々この井戸水を飲み水として使用しており、彼女や家族が時々体調を崩すことはあるものの、彼女は今後も利用をやめるつもりはない。

シャンティがナンディ財団の浄水施設を利用しない理由はいくつもあるが、おそらく多くの人が想像するものとは違う。施設は自宅から楽に徒歩で通える場所にあり、その距離は3分の1マイル(約0.5キロメートル)ほどだ。地域内でも有名で、料金は手ごろである(5ガロン[約19リットル]当たり約10ルピー[約20セント])。一部の村人にとっては、この少額の料金を支払うことは、1つのステータスシンボルにさえなっている。また、シャンティが掘抜き井戸を利用しているのは、通い慣れているからでもない。彼女がより安全な水の利用を見送っているのは、システムのデザイン全体のさまざまなところに欠陥があるからだ。

シャンティは浄水施設まで歩くことはできるが、施設が指定している5ガロンのポリ容器を運ぶことはできない。プラスチックでできた四角形のポリ容器に水を溜めると、あまりにも重すぎるのだ。また、彼女は重い物を運ぶときに腰や頭に載せることを好むが、このポリ容器の形状はそのような運び方に適したデザインになっていない。シャンティの夫も、運ぶのを手伝えない。彼は都心に勤務しており、帰宅した頃には浄水施設の営業が終了してしまっているのだ。また、浄水施設の規則で利用者は、1日あたり5ガロン分のパンチカードを月毎に購入しなければならないが、この量は彼らに必要な分よりはるかに多い。シャンティは、「わざわざ必要以上の量を買ってお金を無駄にしようと思う人はいないでしょう」と言い、もっと少ない量を買わせてくれさえすれば、ナンディ財団の施設からの購入を考えてもよかったと補足した。

この地域の浄水施設は、きれいな飲料水を供給するように設計されており、その目的を果たすうえでは十分に成功している。実際に、この地域に住む多くの人々、特に、夫や年長の息子がバイクを持っており、営業時間中に浄水施設を訪れることのできる家族にとってはうまく機能している。しかし、浄水施設のデザイナーたちは、地域住民全員の文化やニーズまでは考慮できなかったことにより、よりよいシステムをデザインする機会を逃してしまった。

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