コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装
Vol.04
会社は社会的責任を果たすべきだという従業員からのプレッシャーはますます強まり、会社に対して実際に行動を起こす人も増えている。どうすれば従業員は効果的な変化の担い手となれるのか。そして、リーダーは従業員アクティビズムにどう対応できるのか。その戦略について説明する。※本稿は、SSIR Japan 編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 01 ソーシャルイノベーションの始め方』より転載したものです。フォレスト・ブリスコー Forrest Briscoeアビナーヴ・グプタ Abhinav Gupta近年、アメリカの名だたる企業が新聞の見出しを飾るのは、新製品の発表ではなく、従業員アクティビズムで注目を集めたときだ。2019年にはアマゾン・ドット・コムの従業員4000人が、自社が気候変動を悪化させていることを批判し、対応を求める株主提案を行った。その前年にはグーグルの従業員2万人が、自社の甘いセクハラ対処方針に抗議するためにストライキを実施した。2020年にはウォルト・ディズニー・カンパニーの従業員が、新型コロナウイルスのパンデミックの真っ只中にテーマパークの営業を再開することへの安全面の懸念を表明するため、車で行進する抗議活動を実施した。さらに同年フェイスブックの従業員が、人種差別やヘイトスピーチが自社のプラットフォームで容認されていることに抗議するバーチャルストライキを展開した。これらの出来事は、従業員が組織の内側から社会の変化を訴え、時には自社の批判も辞さないという、従業員アクティビズムの台頭を象徴している。このトレンドは、従業員と職場の両方にさまざまな影響を与えている。アマゾンの場合、2019年の従業員株主による提案を受けて、2040年までに自社の二酸化炭素排出量をゼロにすることを約束した。一方、グーグルは従業員のストライキに対してその要求をかわし、今後のアクティビズムを阻止するために従業員ハンドブックを改定した。その後、ストライキを計画した従業員の多くが職場から追い出され、45人の従業員が同社による降格などの報復を報告している。企業の社会的責任(CSR)の向上に対する従業員の期待の高まりは、従業員アクティビズムの活発化の一因となっているが、それは従業員が、社会や環境に悪影響ではなく恩恵をもたらす企業で働きたいと考えるようになっているからだ。企業がCSR 活動にもっと力を入れるよう、多くの労働者が声を上げており、自らの雇用主に圧力をかける場合もある。実際、2019年にウェーバー・シャンドウィックが実施したアンケート調査では、アメリカの被雇用者の75%が「従業員には雇用主に声を上げて反対する権利がある」という意見に賛成した。「反対する」はわずか14%、「わからない」は11%だった。従業員アクティビズムは、従業員の間では支持を広げているものの、多くの企業リーダーの間では物議を醸している。従業員は、自分たちが行動を起こそうとするとき、成功する可能性を高めるやり方とはどんなものなのか、理解を深める必要があるだろう。また、管理職側も、従業員アクティビズムの動向が組織運営において今後もますます重要になることから、どうすれば有意義なかたちで向き合えるのかを知る必要がある。従業員アクティビズムに正攻法はないが、社内でのロビー活動から問題の周知啓発、さらには集合的に組織化してビジネスを妨害することで圧力をかけるなど、多様なかたちがある。本稿では、行動を起こそうとする従業員に向けて、現代における従業員アクティビズムの全体像を把握する手がかりを示しながら、リスクを考慮したうえで効果的な戦術とは何かを提供したい。また、従業員アクティビズムに直面し、支援したいと考えている管理職へのアドバイスも提供する。従業員アクティビズムの台頭
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