コミュニティの声を聞く。
Vol.05
「対等な立場のパートナー」として※本稿は、SSIR Japan 編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 04 コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装』のシリーズ「社会を変えるコラボレーションをめぐる『問い』」より転載したものです。羽生田慶介 Keisuke Hanyuda軍事侵攻、強制労働、人種差別。こうした人権をめぐる問題に企業も無関係ではいられなくなった。世界ではいま、企業の「人権リスク」に対して厳格に対処するためのルールづくりが着々と進んでいる。ここ10年ほどの間に、国連指導原則や各国の人権デュー・ディリジェンス法などが整備されていて、企業と社会の意識が急速に変わりつつある。これは環境領域における1997年前後(京都議定書採択当時)の状況と酷似している。ルール形成が進み、企業の行動が変われば、その後におのずと新たな市場が立ち上がってくる。企業がこうしたルールの下で「人権ビジネス」に参入する際に、避けては通れない重要な要素がある。「NPO・NGOとの連携」だ。近年ソーシャルビジネスやCSVといった概念が国際的に浸透しつつあるのに伴い、にわかに注目を集めているのが「コレクティブ・インパクト」の考え方だ。コレクティブ・インパクトとは、特定の社会課題に対して、行政、企業、NPO・NGO、市民社会など多様な主体がセクターを越えて連携・協働することで解決や変革を目指すアプローチ(やその枠組み)のことを指す。2011年にスタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビューに掲載された論文で提唱された言葉であり、社会課題解決に向けて各組織が個別に努力してきた従来の手法とは一線を画す新たなアプローチとして注目されている。「産官学連携」から抜け落ちているもの現存する社会課題は、その構造や背景が複雑に入り組んでおり、NPO・NGO や企業が独力で取り組んでも抜本的な解決は難しい。パブリックセクター(行政、自治体、学校法人など)、ビジネスセクター(企業)、ソーシャルセクター(NPO・NGO、市民社会など)が垣根を越えて密接に連携し、それぞれの強みを生かし補完し合いながら取り組むことが求められている。その考え方は、欧米に比べて日本ではあまり浸透していない。日本にも古くから「産官学連携」の取り組みがあるが、コレクティブ・インパクトとは似て非なるものだ。その違いは、NPO・NGOなどのソーシャルセクターの存在であり、連携が一切考慮されていない。
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