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サーキュラービジネス4つの基本戦略

企業は自社に合った循環型ビジネスモデルを開発し賢く実行することによって環境面でも財務面でもパフォーマンスを向上させることが可能だ。

※本稿は、SSIR Japan 編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 02 社会を元気にする循環』より転載したものです。

ナンシー・M・P・ボケン Nancy M.P.Bocken
サイス・H・J・ジェラッツ Thijs H.J.Geradts

過去8年間の地球の気温はこれまでで最も高く、気候変動による人類への広範な影響は火を見るより明らかになってきている。感染症や干ばつ、海面上昇による洪水の増加。世界中の国々がこうした有害な影響を緩和するための計画を打ち出している。

2019年、欧州委員会は2050年までにクライメイト・ニュートラル(温室効果ガスの排出が実質ゼロである状態)となることを目指す予算1兆ユーロ規模の「グリーン・ディール」計画を立ち上げた。その一部である「循環型経済行動計画」は、生産や工業のプロセスをより持続可能なものにし、環境に配慮した消費を促し、また、資源を可能な限り長く再利用しリサイクルすることによって、廃棄物を削減することを目指すものだ。アメリカではバイデン政権が2021年にパリ協定に復帰し、インフラと持続可能エネルギーに2兆ドルを投資することを約束した。

主要企業も持続可能性に関して、意欲的な目標を設定している。企業は循環型経済(サーキュラーエコノミー)の考え方を取り入れ、加速する気候変動に対応するため環境課題に取り組んでいる。これまでの直線型経済(リニアエコノミー)は、製品をつくるために資源を採掘し、しばらく使用したのちに製品を捨てるという、「採って、つくって、捨てる」経済だった。循環型経済はそこから離れ、製造と消費の新たなモデルを提示する。廃棄物を削減し、資源をリサイクルし、自然を再生するモデルである。

直線型経済から循環型経済への移行を実現するために、企業は次の4つのサーキュラービジネス戦略を用いている。

1.製品当たりの原材料の使用量の削減(資源ループの縮小)
2.製品寿命の長期化(資源ループの減速)
3.原材料の再利用(資源ループの完結)
4.製造プロセスで用いられる天然資源の回復(資源ループの再生)1

これらの戦略によって、企業はコストを削減し、自社の評価を高め、新製品の開発や新市場の開拓を加速することが可能になる2。しかし、サーキュラービジネスモデルに移行する際には、多くの難題にぶつかってしまう3

筆者らは10年以上にわたり、持続可能なサーキュラービジネスモデルを研究し、サステナビリティ事業をリードする企業のマネジャーたちに200回以上のインタビューを実施してきた。そうした経験から、サーキュラービジネスモデルを設計する過程にある企業は、次の3つの分野で問題に直面していることがわかった。

1.市場における付加価値
 そのビジネスモデル戦略は顧客にとって魅力的か
2.技術的な実現可能性
 その戦略は技術的、事業的に実現可能か
3.財務面での合理性
 その戦略で利益を出せるのか

ミシガン大学教授で企業の持続可能性を専門とするアンドリュー・ホフマンが指摘するように、循環型戦略の探求や導入は、従来型の事業手法によって妨げられることが多い。これはソーシャルイノベーションに典型的な課題である4

本稿では、前出の4つのサーキュラービジネス戦略を採用している企業が、どのような問題にぶつかるかを上記の3つの観点から検討したうえで、企業がサーキュラービジネスモデルを採用できるよう、それぞれの戦略の経営的な意味合いと、ベストプラクティスを紹介していく。

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翻訳者

  • 東方雅美
  • 考えてみる、調べてみる、ためしてみる etc.
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