リーダーシップ・人的資本強化

アラインメントの時間

今年は24時間分の余白が生まれます。これは、社会変革に取り組むリーダーが、「自分は何者なのか」と「何をするのか」のつながりをあらためて見つめ直す、またとない機会です。

※訳者注:本記事は2016年に英語で発表されました。次のうるう年は2028年です。

ロシャン・ポール(Roshan Paul)
ブリット・ヤマモト(Britt Yamamoto)

【翻訳】井川 定一(SSIR-J 副編集長)
【原題】Time to Align(Stanford Social Innovation Review, February 29, 2016)
【リード・コメンテーター】阿部 裕志(株式会社風と土と 代表取締役)

2016年は、うるう年です。つまり、私たちのカレンダーには、新たな24時間が加えられます。

地球が太陽の周りを一周するのに要する時間は、正確には365日ではなく、365日と4分の1日です。そのため、何もしなければ暦と天体の動きの間に「ずれ(calendar drift)」が生じてしまいます。これを防ぐために、私たちは4年に一度、この24時間を暦に加えます。こうして4年ごとに1日を挿入することで、人間が使う暦は、宇宙のリズムと同期し続けることができるのです。

そう考えると、これはとても特別なことです。「何に使ってもよい1日」が、私たちに与えられているのです。

けれど、現実はそう簡単ではありません。私たちは、2月29日を、ほかの日と同じように扱います。「時間がいくらあっても足りない」「1日にあと数時間あればいいのに」といった言葉が当たり前に聞かれるこの世界で、私たちは、この貴重な24時間を、ほとんど無関心にやり過ごしてしまっているのです。

私たちのアラインメントの物語(Our Alignment Stories)

私たちがそれぞれ運営しているリーダーシップ育成組織――iLEAPアマニ・インスティテュート――はいずれも、社会的インパクトを志すキャリアにおける「個人の側面」を非常に重視しています。世界に変化をもたらすという挑戦には、自分は何者なのか、何に突き動かされているのか、そして自分自身をどのようにケアしているのかについての、明確な理解が不可欠であると、私たちは知っているからです。

この問いは、私たち二人にとって、世界各地の社会変革リーダーや起業家と向き合う仕事の中で、常に重要な役割を果たしてきました。変化のスピードが速く、起業家的で、しかもグローバルに展開する組織を率いるリーダーとして、私たちは常に、数え切れないほど多くの課題と向き合い、同時にいくつもの責任を抱えながら舵取りをしています。

私(ロシャン)にとって、アラインメント(整合)が劇的かつ予想外のかたちで訪れたのは、2011年のある春の朝でした。賢明な年長者が、半ば問い詰めるように、半ば導くように、私にこう尋ねたのです――「今の目標を達成した後、あなたは何をしたいのか?」と。人生の終わり方をどう描くかが分かれば、始まりを設計することはずっと容易になります。この対話の後、アマニ・インスティテュートに対する私の思考や願いが、頭の中でカチリと噛み合う、ほとんど身体的とも言える感覚を覚えました。そして、その結論は、私自身の予想とは異なるものでした。当初構想していた「平和構築の担い手を育てる学校」ではなく、アマニ・インスティテュートは、社会的インパクトのあるキャリアに関心を持つすべての人が、自らの人生の枠を超えて、そのようなキャリアを築くことができる場になるべきだと、気づいたのです。

私(ブリット)にとって、アラインメントの重要性は、もっとゆっくりと、しかし確実に忍び寄ってきました。iLEAPの初期、成長と創造の高揚感に突き動かされ、やるべきことのリストは際限なく膨らんでいきました。その一方で、家族と過ごす時間や、個人的な成長のための時間は、次第に削られていきました。一時的なものだと思っていた状況は、やがて行動のパターンとなり、私の優先順位を大きく狂わせ、iLEAPを立ち上げた原点である人間関係や個人的な実践から、私をどんどん遠ざけていったのです。そこで私は、自分にとって本当に大切なものとのつながりを保つための、個人的な実践を意識的に育て始めました。そして何よりも重要だったのは、この気づきによって、私がリーダーシップに悩み、社会変革に取り組むリーダーたちが直面する数多くの困難と格闘している一人の人間として、等身大で、取り繕うことなくその場に立てるようになったことです。

自分自身と行動を一致させるための方法(Ways to Build Alignment)

チェンジメーカーや草の根のリーダーたちとともに活動する中で、私たちは「実際にしていること」と「本当はしたいと思っていること」とアライン(一致)させる重要性を、繰り返し実感してきました。それは、厳しいキャリアの局面を乗り越えるための、パーパス(目的意識)の強さとレジリエンスを与えてくれるものでした。

このうるう年を、私たち一人ひとりが仕事と人生とのアラインメント――すなわち、自分が何者であるのかと、何をしているのかとのつながり――について考える特別な機会にできないだろうか。そう考える中で、私たちは「24more」キャンペーンを立ち上げました。このキャンペーンは、「自分は何者なのか」「自分を支え、軸となっているものは何か」「なぜその活動をしているのか」といった問いを探求することへと、皆さんを招くものです。

また、私たちにインスピレーションを与えてくれたプラットフォームは、ほかにもあります。
• Conscious CompanyConscious Company誌は、ストーリーテリングとデザインの力を活かし、価値観を重視するビジネス(values-driven business)へと向かう世代的な転換に光を当てることを目指しています。
• Imperative:Imperativeのチームは、パーパス(目的意識)を持つ従業員(purpose-driven employees)の不足が、今日の企業にとって大きな脆弱性であると指摘しています。Imperativeによれば、パーパスを持って働いているアメリカの労働者はわずか28%にすぎません。こうした状況を変えるための提案が、Imperative創設者アーロン・ハーストによって示されています。
• TED:当然ながら、TEDには、仕事における幸福と自分自身の整合をテーマにした数多くの講演があります。私たちは特に、ショーン・エイカーバリー・シュワルツのトークを気に入っています。また、TEDには「目的を見つけるための7つのトーク」という素晴らしいプレイリストもあります。

今日からできること

以下の3つのステップは、アラインメント(整合)とパーパス(目的)に向かって歩み始める助けとなるはずです。

  1. 社会的インパクトの分野で活躍するイノベーターやリーダーたちが、どのように実践しているのかを知る。
  2. 次の問いについて考え、浮かんできたことを書き留めてみる。
    ・思わずベッドから飛び起きて、行動したくなるのはどんなときか。
    ・急速に変化する世界の中で、15年後も変わらずにいそうな自分の一部は何か。
    ・なぜ、あなたは今の仕事をしているのか。
  3. 親しい友人や信頼できる相談相手に、「あなたが最も幸せそうだった、あるいは充実していたのはどんなときだったか」を尋ねてみる。これは、あなたにとって非常に重要なデータになります。

忙しい日々のなかでは、自分にとって本当に大切なものに立ち返り、心をしっかりと地に足のついた状態に保つことの大切さを、あらためて思い出させてくれる存在が役に立つことがあります。では、あなたは2016年に与えられたこの24時間を、どのように使うでしょうか。

著者紹介
ロシャン・ポールは、21世紀の課題に取り組む人材を育成するための新しい高等教育モデルとして、アマニ・インスティテュートを共同創設しました。それ以前は、約10年間にわたりアショカに在籍し、世界各地の社会起業家を支援する複数のプログラムの立ち上げと運営を担ってきました。
ブリット・ヤマモトは、これまでに数多くの社会的企業を立ち上げ・主導するとともに、国際開発、市民社会、食と農業といった分野において、幅広い学術研究にも取り組んできました。2007年には、国際的な非営利組織 iLEAP を設立し、統合的リーダーシップ・プログラムを通じて、社会変革を担うリーダーやグローバル市民に希望と変容をもたらすことを使命として活動しています。

◆ リード・コメンテーター 

私たちは、いつの間にか「本当はしたいこと」と「実際にやっていること」がズレていきます。社会を良くしたい、人の力になりたい。そう願って入社したり、事業を始めたはずなのに、目の前のタスクや数字、締切が“目的”そのものになってしまう。手段の目的化は、まじめに走る人ほど起きてしまう現象です。

厄介なのは、計画的に思考する“頭”だけでは、そのズレに気づきにくいこと。合理的であるほど、説明可能なことだけを積み上げ、違和感は「忙しいから」「今は仕方ない」と押し込められていく。この記事が語る “Align” は、その静かなズレに光を当て、「自分は何者で、何のために行動しているのか」をつなぎ直す呼びかけだと感じました。

かくいう私自身も、海士町という離島で大きな夢を掲げて起業したものの、会社を維持することに追われるうちに手段が目的化し、事業も組織も回らなくなっていきました。何のために頑張っているのかが分からなくなり、本当に苦しい時期がありました。

では、ズレに気づく入口はどこにあるのか。私は、その鍵は「非日常」と「身体性」だと考えています。日常の延長線上では思考は同じレールをなぞりがちですが、環境が変わると、言葉になる前の違和感——怖さ、震え、胸の高鳴り——が先に真実を知らせてくれる。著者ブリットが率いるiLEAPのプログラムに私自身シアトルで参加したときも、そのことを身体で実感しました。

そして私たちなりに「非日常」と「身体性」を意図的にデザインしたのが、SHIMA-NAGASHI(島流し)です。島根県・隠岐諸島の海士町に3日間滞在し、非日常の島で、身体知→内省→対話を繰り返しながら、“腹落ちしたビジョン”を物語として語って持ち帰るリーダーシップ・プログラムです。リーダーが正解へとチームを“頭”で引っ張るのではなく、正解がわからない時代に、周囲の“心”を動かし、不確実性に飛び込めるチームをつくれるリーダーを増やしたいと考えています。

ある大手企業の人事リーダーは、これまで社名を隠すように、波風を立てず無難に仕事をしていました。けれどSHIMA-NAGASHIで島の高校生と対話したとき、身体の底から浮かんできたのは、「自分の子どもに『お父さん、カッコいい仕事しているね』と言われたい」というビジョンでした。日常に戻った彼は、波風を起こしながらも仲間を増やし、役員や社長も巻き込み、ついには社員の人材育成の仕組みを大きく変革していったのです。

手段の目的化がズレを生むなら、私たちが目指すのは「目的の手段化」です。自分の目的を、より大きな目的へ接続し直すこと。Alignとは、その接続を取り戻す営みなのだと思います。

リード・コメンテーター紹介
阿部 裕志株式会社風と土と 代表取締役。トヨタ自動車で生産技術エンジニアとして働く中で競争社会のあり方に疑問を抱き、持続可能な社会へのタグボートを目指して、人口約2,300人の島・海士(あま)町に2008年移住、起業。100社以上が参加するリーダーシップ研修「SHIMA-NAGASHI」を核とする人材育成事業を中心に、出版社「海士の風」を運営する出版事業、島の課題を解決する地域づくり事業を行う。海士町は独自の行財政改革と産業創出・教育改革を進め、1,000人を超える移住者が集う島となっている。

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