コミュニティの声を聞く。
Vol.05
災害、環境破壊、貧困など現代社会には解決が難しい複雑な問題があふれている。私たちの社会は、こうした「やっかいな問題」にアプローチするために、人と人とが紡ぎ出す社会ネットワークを活用している。本稿では、東日本大震災へのサードセクターの対応の事例から、「問題の解き方としてのネットワーク」を可視化し、そのメカニズムの特性や扱い方を理解する。※本稿は、SSIR Japan 編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 04 コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装』より転載したものです。菅野 拓 Taku Sugano世の中にはさまざまな問題があふれている。どの経路で行けば目的地に早く着くのかといったかなりシンプルな問題から、世界の貧困をなくすといった複雑な問題まであふれかえっている。しかし、私たちの社会が見出した問題の解き方や、解決策の生み出し方の一般的なパターンはそう多くない。私たちの社会は主に2つのメカニズムを通して財・サービスを供給することで問題を解いている。メカニズムの1つは「階層組織(hierarchy)」で、もう1つは「市場(market)」である1。階層組織とは、行政機関か民間組織かを問わず、ほとんどの組織が採用する一般的なメカニズムである。階層組織というパターンは、近代社会における特徴的な組織形態である「官僚制」として社会学者マックス・ウェーバーによって見出された2。階層組織においては、合理的なルールや秩序に従って組織を複数の部門に分割し、部門間の協業によって組織の目標を効率的に達成しようとする。営利企業や非営利組織、行政機関など、階層組織というメカニズムを用いて問題を解いたり、解決策を生み出したりしている組織は多くある。市場は、多くの消費者と生産者が個々に価格変動に対応し、それぞれの効用と利潤を最大化するように機能する。多くの組織や個人が生産者や消費者として市場に参加している。消費者から選ばれる解決策を生み出すと利潤がもたらされるため、生産者は多くの場合、階層組織を採用してよりよい解決策を生み出そうとする。階層組織は輪郭が明確で、ゴールや目標が見えやすい問題には有効な方法だ。たとえば大きな海峡に橋をかけるといったかなり複雑な問題であっても、計画を立て分業しながら効率的に解いていくことができる。しかし、事前に計画が立てられない問題を解くことは不得意だ。「縦割りの弊害(sectionalism)」として、有益な知識を持つ他の組織や部門、個人が問題に関わることを妨げることもあるだろう。
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