コミュニティの声を聞く。
Vol.05
支援対象者は弱者ではなく「力のある存在」※本稿は、SSIR Japan 編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 04 コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装』のシリーズ「社会を変えるコラボレーションをめぐる『問い』」より転載したものです。吉岡マコ Mako Yoshiokaリソースの掛け合わせでより大きな効果をもたらす産前産後ケアに取り組む認定NPO法人マドレボニータ、シングルマザーのセルフケア支援とエンパワメントを行うNPO法人シングルマザーズシスターフッドという2つの活動を通じて、企業や行政、大学の研究チームなど、さまざまなセクターと連携して事業を行ってきた。これまでの他セクターとの連携の一例をあげると、企業との連携では、NECとマドレボニータで「母となってはたらく」ことについて語る場づくり(NECワーキングマザーサロン)を、10年間にわたって協働した経験がある。シングルマザーズシスターフッドでは、日本マイクロソフトとともにひとり親がITスキルを身につけるためのプログラムを実施した。また、行政では、東京都北区とマドレボニータの連携が数年間にわたり続いている。これは、区内の児童館で、区民が産前産後のセルフケア講座を無料で受けられるというものだ。現在は新型コロナウイルスの影響で対面講座は休止しているが、コロナ前は告知をするとすぐに定員が埋まるほどで、行政と連携することによって圧倒的に多くの人々に必要な支援を届けることができている。そうした経験から、セクターを越えた協働には、それぞれの持つ資金力、広報力、専門技術、科学的知見などのリソースを組み合わせ、より大きな社会的影響や効果をもたらせるというメリットがあることを実感している。担当者個人の熱量や価値観が推進力にも壁にもなり得るこれまで長期にわたって継続できた連携事業を振り返ってみると、企業であっても行政であっても、連携先の担当者が私たちの事業に個人的にも共感し、熱意を持って取り組んでくれたケースが多い。たとえば北区での産前産後セルフケア講座の開催は、もともと育休中にマドレボニータの教室に参加して感激した区職員の「復職したらこれを北区に導入するんだ」という熱い思いで実現した。NECの場合も、特に最初の担当者は情熱を持ってコミットしてくれており、その後何度か担当者が変わったときも現場に足を運んでもらい、定期的にしっかりと対話の場を設けてきた。ただ、逆に言えば、それは現場担当者の熱量や価値観に決定を左右されるリスクがあるということだ。これは多くのNPOの担当者も感じていることではないだろうか。実際に北区で継続している事業とまったく同じ内容であっても、途中で事業が終わってしまった自治体もある。また、現場の担当者とは事業の意義や目的を共有できていても、その企業の上層部の判断によって突然事業が終わってしまったケースもあった。
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