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Editor’s Note:ソーシャルイノベーションの始め方

Editor’s Note:ソーシャルイノベーションの始め方

主語を「わたし」に戻す。

※本稿は、SSIR Japan 編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 01 ソーシャルイノベーションの始め方』より転載したものです。

中嶋愛 Ai Nakajima

ようこそ、はじめまして。スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー日本版(SSIR-J)の創刊号をお届けします。

スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー(Stanford Social Innovation Review/SSIR )は2003年にスタンフォード大学内で創刊された、社会変革の探求者と実践者のためのメディアです。

日本版ではSSIRのなかから選りすぐりの記事の翻訳と日本社会の文脈に合わせたオリジナルコンテンツをお届けいたします。

創刊号のテーマは「主語を『わたし』に戻す」です。ソーシャルイノベーションというと、社会の不正義や不平等、不合理や不便の解決というイメージがあるかもしれません。そしてそれは個人ではどうしようもない困難な課題であるように感じるかもしれません。こうなったのはわたしのせいではないし、誰かが責任をもってどうにかすべきことだ ーーーそんなふうに思うこともあるでしょう。

でもそれは「わたし以外の誰か」にいちばん大切なことを白紙委任していることになります。この号でご紹介している博報堂の「生活者の社会意識調査」で、「特に取り組んでほしい・取り組みたい」と多くの人が答えた社会課題に対して、「国」「地方自治体」が主体となって取り組むべきだという答えが突出していました。

もちろん、最終的には国や自治体が動かないと変わらないことはあります。でもわたしたちも自治体や国の主体として、社会の起点として、どの方向に変えるか、どうやって変えるかを考え、共有し、よりよい選択肢を見つけることに意識を向けることが大切だと思うのです。そのささやかな一歩として「国」「自治体」「学校」「会社」「あの人たち」という主語から「わたし」という主語に戻してみる。そしてその「わたし」が「わたしたち」になったとき、ソーシャルイノベーションが始まるーーー そんな希望を創刊号に込めました。

冒頭のオープン・ソーシャルイノベーションの記事では、まさに国、自治体、企業、個人が一体となってCOVID-19対策を短期間でまとめあげる過程を詳しく伝えています。また、従業員アクティビズムについての記事では、社員が会社を変えていくためのよりよい方法を模索しています。一方で「わたし」が背負いこみすぎて壊れてしまっては元も子もありません。個人の感情や信条を大切にすることが社会を変える仕事を持続可能にするという研究についても紹介しています。

SSIR-Jでは、ソーシャルイノベーションが生まれる土壌としての市民社会(シビル・ソサエティ)についても皆さんとともに考えていきます。創刊号にはSSIRに2010年に掲載された市民社会の弱体化に警鐘を鳴らすブルース・シーバーズの論文を取り上げました。環境問題や貧困問題など大きく報じられる問題の陰で、市民社会を支える言論が衰退していくのをどうやって食い止めるのか。その問いに呼応するように経済学者の井手英策が自律した市民として生きるためのベーシックサービスとしての大学教育について論じています。

SSIRはソーシャルイノベーションの実践者のためのメディアです。ソーシャルイノベーションの実践においては社会起業家と呼ばれる人たちが重要な役割を果たしています。この四半世紀を通じて日本の多くの社会起業家を支援してきたETIC.のユニークな哲学と方法を、ジャーナリストの勝見明が「暗黙知」という観点から掘り下げます。

日本人の実践者の肉声もお届けしていきます。トップバッターは、SSIRにも登場したことのあるNGOコペルニクの中村俊裕。途上国の「ラストマイル」と呼ばれる最も支援の届きにくい地域の課題を解決するための実証実験に特化するに至った試行錯誤の過程を語っています。

SSIRの記事は情報量が多く、予備知識もある程度必要な内容なので、日本語に翻訳されたとしても決してさらっと読めるものではありません。でもあえて簡単にまとめたり、解説をつけたりはしないことにしました。何度も読む、誰かと読むことを通じて、一人ひとりに意味のあるかたちでの実践につなげてほしいからです。そのための仲間が見つかるコミュニティを創刊と同時に立ち上げます。参加方法についてはこちらのページでご案内しておりますので、ぜひご覧ください。

SSIR-J のコミュニティを考えたとき、「市民農園」という言葉が浮かびました。土地と農具、ときどき肥料も用意しますが、何を植えるかを決めるのは皆さん自身です。自らの手で育て、収穫を楽しみ、豊かな季節を重ねながら、まさに地に足をつけて望む未来に進んでいく。そのお手伝いができたらと願っています。

中嶋 愛

スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 編集長

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