
パフォーマンス測定の光と影
パフォーマンス測定は従業員が自分の仕事に価値を見出す後押しになる。
※本稿は、SSIR Japan 編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 02 社会を元気にする循環』より転載したものです。
ダニエラ・ブレイ Daniela Blei
社会的企業や非営利団体にとって、存続のために活動実績の測定は不可欠だ。資金提供者からもデータを求める声が高まっているが、社会的インパクトや社会的価値の測定方法について、いまだ統一されたものはない。組織によってその測定方法はさまざまで、多くの組織が測定を負担に感じている。
経営学の博士課程に在籍していたヘイリー・ビアーは、社会的企業の活動の測定方法に興味を持つようになった。従業員や組織が測定結果からより大きな価値を得るには、インパクトの測定方法をどのように開発し、有効活用すればいいのだろうか。
イギリスにあるウォーリック・ビジネススクールのビアー教授(オペレーションズ・マネージメント)と、同大学のピエトロ・ミシェリ教授(企業パフォーマンスとイノベーション)、オックスフォード大学サイード・ビジネススクールのマリア・ベシャロフ教授(組織論とインパクト)は、パフォーマンス測定、つまり組織のプロセス・活動・集団行動に関するデータ収集と分析が、従業員が仕事に価値を見出すうえでどのように役立つのかを示す新たな論文を発表した。そこでは、組織が誰に測定を依頼するのか、従業員が測定のプロセスにどう関わるのかをしっかり検討することで、結果が予想以上に大きく変わりうることがわかった。
ビアーはまず、イギリスにある大規模な社会的企業2社の従業員の観察と記録のデータを収集し、インタビューを実施した。情報保護のために団体名を匿名とし、若年層のホームレス化予防と経済的自立を支援する団体を「ユース・フューチャーズ(YF)」、有機栽培を通じてサステナビリティを推進する団体を「オーガニック・アース(OE)」とした。この2つの組織の経営においては成果測定がよく根付いているとビアーは言う。ビアーと共同研究者たちは、当初、YFとOEの従業員が業務においてどのように測定ツールを利用しているかを分析しようと考えた。しかし、すぐに別の発見があった。従業員のパフォーマンスのモニタリングと評価が、仕事の意義に関する認識に大きな影響を与えていたのである。仕事の意義を強く感じる方向に働くこともあれば、その逆の影響もあった。
「測定をするのはあたりまえのことであり、測定プロセスは中立的なものだという考え方もあるが、測定は人が自分の仕事に意義を感じるかどうかに、さまざまなかたちで影響を与えうる」とビアーは言う。
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翻訳者
- 布施亜希子