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投資の可能性を拓く: 社会的インパクトと利益のトレードオフからどう脱却するか

インパクト投資の世界では長年、「経済的リターンと社会的インパクトは両立しうるのか否か?」という決着のつかない論争が繰り広げられてきたが、もはやそれはトレードオフではない。インパクト投資分野で、営利投資から助成金まで幅広い案件を手掛けてきたオミディア・ネットワークが、これまでの知見と経験を凝縮したフレームワークを、投資判断の具体例とともに示す。

※本稿はスタンフォード・ソーシャルイノベーションレビューのベスト論文集『これからの「社会の変え方」を、探しに行こう』からの転載です。

マット・バニック Matt Bannick
ポーラ・ゴールドマン Paula Goldman
マイケル・クブザンスキー Michael Kubzansky
ヤセミン・サルトゥク Yasemin Saltuk

インパクト投資業界では、「社会的インパクトと経済的リターンの間には、トレードオフが避けられないのか?」という議論が以前から続いている。

「社会的インパクトを最大化したければ、投資家は経済的リターンを犠牲にせざるを得ない」という考え方がある。なぜなら、利益を最大化しようとする行動によって、必然的に企業は社会的なミッションから遠ざかっていくし、支援を必要とする受益者を重視する姿勢も弱まってしまうからだ。

一方で、逆こそ真である、すなわち、「社会的インパクトと経済的リターンには強力な正の相関がある」という主張もある。この見方では、インパクトを最大化するのにベストな方法とは、健全なキャッシュフローを生み出して市場に進出することで急成長できるような、採算性のある営利組織をつくることである。結局のところ、成長資金をうまく獲得できない組織は、十分に事業を拡大できないからだ。

この議論は長年決着がついていないが、新たな気づきよりもはるかに多くの混乱を生み出しており、インパクト投資分野の成長を妨げている。「経済的リターンと社会的インパクトはトレードオフなのか」という問いに対して、インパクト投資に関わる多くのリーダーが、「Yes」あるいは「No」と答えたくてたまらない。しかし私たちは、過去10年間のオミディア・ネットワーク(Omidyar Network)での経験から、「Yes」でも「No」でもない、「場合による」という答えにたどり着いた。事例によっては、と言うよりもおそらくほとんどの事例において、経済的リターンと社会的インパクトにはたしかに強力な相関関係がある。一方で、経済的リターンが少なくても、非常に大きな社会的インパクトを企業が生み出せるような事例もある。

私たちオミディア・ネットワークは、フィランソロピー投資の会社であり、社会的インパクトを大きく生み出すような事業の支援を目指して世界各地で活動している。営利企業と非営利組織の両方に資金を提供しているが、特に重点を置いているのは、「教育」「新興テクノロジー」「金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)」「行政のガバナンスと市民参画」「土地およびその他の財産に対する所有権」の5セクターである。

これまでの経験を経て私たちは、インパクト投資分野はトレードオフをめぐる非生産的な議論から脱却して、より現実的な問いに向き合うべきだと考えるようになった。その問いとは、「投資家はどういった条件下で、社会的インパクトを実現する機会と引き換えに、市場相場よりも低いリスク調整後リターンを受け入れるべきなのか」というものだ。

本論文では、私たちが「リターンの連続体」と呼ぶものに、どうやって横断的に投資するかのフレームワークを提案する。この連続体には、完全に営利目的の投資から、利益を求めないフィランソロピーの助成金まで、幅広く含まれている。このフレームワークは、有望な投資手法は幅広く存在しているという私たちの信念に基づいている。一部、社会的インパクトと経済的リターンの間のトレードオフが生じるものも含まれるが、多くのものではそういった事態は生じていない。

私たちが主張したいのは、「市場の相場よりも低いリターンを受け入れるべきか」の検討が必要になるのは、限られた状況の場合のみである、ということだ。オミディア・ネットワークでは、リターンの見込みが低い案件を受け入れるのは、「市場レベルのインパクト」を私たちがあえて追求しようとしている場合だけであり、例外はほとんどない。そして、市場レベルのインパクトを評価するための明確なフレームワークも、私たちは開発した。このようなアプローチをとるからといって、弱いビジネスモデルに投資する口実をつくってはならない。しかし、特定の状況下では、社会変化を加速するような新たな市場を生み出しうる企業を支援するために、インパクト志向の投資家はリターンの期待値を調整すべき場合もあるのだ。

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