
超高齢化社会の行政デジタル化はどこから始めるか
鍵を握るのは地味で地道なプロダクト改善能力
※本稿は、SSIR Japan 編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 03 科学技術とインクルージョン』のシリーズ「科学テクノロジーと社会をめぐる『問い』」より転載したものです。
及川涼介 Ryosuke Oikawa
人の生活を変えるイノベーションとは
10年前、高校生だった私は、テクノロジーの拓く未来に心を躍らせていた。ソーシャルメディアやシェアリングエコノミーの台頭が経済や社会システムを根底から変えるのだとワクワクしていた。
それから10年が経ち、当時のイノベーションは既に生活になじみ、当たり前になった。もはやUberは新しい経済の旗手ではなく、出前やタクシーを頼むアプリの1つに過ぎない。
考えてみれば、これまでもそうだったはずだ。電気や自動車も出現した当時は画期的だっただろうが、今や日常の一部だ。各戸に電線が引かれ、スイッチ1つで明るくなることに心躍らせる人は少ない。コモディティになれなかったイノベーションは、歴史の波に埋もれ、忘れられていった。
新しいテクノロジーが生活に根付くために必要なのは、華々しい変革ではなく、気が遠くなるほど地味なプロダクト改善の積み重ねだ。そのプロセスを経て、初めてイノベーションは人々の生活に役立つものとなる。
自治体として市民のために何ができるかと考えると、この一見地味で地道な改善プロセスが持つ大きな意味に気づく。本当の意味で人の生活を変えるということは、地道な課題解決を繰り返した先にしか実現しないのではないか。過去にイノベーションと呼ばれたテクノロジーを振り返ってみて、そのように感じている。自治体がこの改善プロセスを繰り返すためには、まず市民のニーズをすくい上げる必要がある。
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