企業

社会貢献活動に参加する男性社員は出世できない?

管理職のジェンダーバイアスによって社会貢献活動を行う男性社員のキャリアに傷がつく可能性がある。

※本稿は、SSIR Japan 編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 02 社会を元気にする循環』より転載したものです。

チャナ・R・ショーンバーガー Chana R. Schoenberger

営利企業が社会的インパクトを目指す活動に取り組み、その活動に社員の参加を求める場合、社員のキャリアパスにはどんな影響があるだろうか。そのような活動への参加が、社員のスキルを磨き、キャリアを充実させる助けとなるのだろうか。

実際には、社会貢献活動への参加が昇進の妨げとなっている可能性があることが新しい論文で明らかにされた。特に、参加したのが男性で、評価を行う上司も男性の場合はこの傾向があるという。その論文によると、企業が社会貢献を謳っていても、管理職はボランティアを行う社員を、仕事へのコミットメントが低く、社風に合わないと評価する可能性があるようだ。昇進を目指しているのが男性で、その評価をするのも男性である場合は実際にそうしたことが起きている。

インペリアル・カレッジ・ビジネススクールのクリスティアン・ボード助教(戦略論)は、同僚のミシェル・ローガン准教授(戦略論と起業論)、およびINSEAD(欧州経営大学院)のジャスジット・シン教授(戦略論)と共に論文を発表した。

「社会貢献活動は男性よりも女性がするものだという固定観念があるため、参加した男性の昇進率は低い。また、男性の上司は女性の上司と比べ、こうした活動へ参加する男性社員の昇進を推薦する可能性が低い」と彼らは述べている。企業のプロボノ活動に参加した男性は、同じく活動に参加した女性や、男女関わらず参加しなかった人よりも、昇進率が低いのである。

研究者たちは 2 つの調査を行った。コンサルティング企業で働く1379人の人事記録を見直すとともに、893人の管理職に対して実験用シナリオを共有し、管理職が架空の社員の昇進を認めるかどうかの調査を行った。架空社員のプロフィールには、社が取り組む社会貢献活動への参加の有無が書かれており、男性か女性の名前と代名詞だけが異なる履歴書を渡した。

インタビューの結果、管理職はこのようなボランティア活動を行う社員に対し、仕事や会社へのコミットメントが低く、企業文化に合わないと感じていることが明らかになった。こうした後ろ向きな影響が最も顕著に見られたのは、男性の管理職が男性社員を評価する場合においてであった。

多くの企業は、株主重視の資本主義へのコミットメントと、今日ますます広まってきている企業の社会的価値とのバランスをとろうとしている。顧客も、とりわけ社員も、それを期待している。会社の時間を使って社会貢献目的のボランティア活動に参加する機会を設けることは、大企業やベンチャー企業の採用や人材定着戦略において、もはやスタンダードとなっている。社員は自分の取り組む活動が会社の公式プロジェクトであれば自分の経歴にもプラスになると考えるし、多くの場合、会社全体の取り組みに進んで参加することは昇進の明らかな条件とされている。

「社会貢献活動に参加することによる昇進へのマイナスの影響は、参加者と管理者の性別によって異なる。社会貢献活動の評価における性別の影響が浮き彫りになった」と研究者らは述べている。「圧倒的に男性の意思決定者が多い環境においては、性別による役割分担への思い込みが、企業の社会貢献活動における男性社員の活躍の余地を制限してしまっているのかもしれない」。

最も驚くべき結果は、管理者の性別と、架空社員のボランティア活動の評価に、強い関連が見られたことだとボードは言う。このようにジェンダーの固定観念が男性のキャリアに不利に作用するのは珍しいケースで、通常職場でこのような影響を受けるのは女性であることが多い。

ボードによれば「社会貢献活動に従事した男性は確かに昇進しにくく、このパターンは男性の上司によって評価されたときにより顕著になるはずだと私たちは考えていた。それが最終的には、昇進へのマイナスの影響は、完全に男性によってもたらされていることがわかった」。

企業の社会的責任(CSR)への取り組みが進むなか、もし管理職自身のジェンダーバイアスが企業の目標達成の妨げとなっているならば、経営者はそのバイアスをどのように解消するかを考える必要があるだろう。

「従業員主体のCSR活動を行う企業は、こうしたプログラムが規範、信念、偏見など、より大きな社会構造のなかに組み込まれていること、それが時に会社の意に反して作用する可能性があることを、考慮にいれておく必要がある」とボードは述べている。

企業の経営者は多くの場合男性である。社会的インパクトを目指すプロジェクトを企業文化に根付かせるためには、企業がどのように変化しなければならないのかをこの研究は示唆しているといえるだろう。

「この論文の最も重要な貢献はジェンダーの固定観念が、組織における社会貢献活動の評価にどのような影響を与えるのか、具体的には、性別によって報われるのか罰せられるのかが決まると示したことにある」と、ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネス助教のマシュー・リーは述べている。「女性はより社会的な役割に従事することが多く、そうすることで評価される傾向にあると考えられる。しかし、ここで特筆すべきは、こうした取り組みに参加した男性は事実上、ペナルティを課されることである。特に、他の男性によって評価される場合には」。

キャリアに傷がつくとなれば、男性は仕事関連のボランティア活動を敬遠してしまうかもしれない。
「この論文は、性別によって期待される役割が異なっていることを示しており、ジェンダー・カルチャーが、優秀な人材が最も差し迫った社会課題に取り組むのを妨げているのではないかという重要な問題を提起している」とリーは述べている。

【翻訳】五明志保子
【原題】Punished for Pro-Social Work (Stanford Social Innovation Review, Winter 2022)

参考論文
Christiane Bode, Michelle Rogan, and Jasjit Singh, “Up to No Good? Gender, Social Impact Work, and Employee Promotions,“ Administrative Science Quarterly, June 4, 2022.

Comments are closed.