パーパス・ドリブンな企業が享受する3つのベネフィット

パーパス・ドリブンな企業が享受する3つのベネフィット

パーパスはどのように多くの消費者を惹きつけ、絆を深め、ブランドメッセージを増幅させるのか。

ホイットニー・デイリー Whitney Dailey

フェイスブックは個人情報流出問題で謝罪広告によるお詫び行脚を行い、社内のいじめ問題などで評判を落としたウーバー・テクノロジーズは「前に進んでいく」と前向きなメッセージを掲げたブランドキャンペーンを展開、ナイキもセクハラや性差別などを含むボーイズクラブ的な企業文化からの脱却に取り組むことを明らかにした。これらは、消費者に対して自社の罪を悔い改める告解をした企業のほんの一部にすぎない。なぜか。時代が変わったからだ。今日、消費者やステークホルダーは、単なる製品やサービス以上のものを企業に期待しているのである。

パブリックリレーションズとマーケティングを手掛けるコーンコミュニケーションズは、30年以上にわたって社会的責任との関係における消費者行動を見つめてきた。その彼らによると、消費者は確実に企業に対し、より高いものを求めるようになってきたという。企業が短期的・局所的に、社会的大義や社会的課題をサポートするだけでは不十分だということだ。消費者は30年前よりもはるかに賢くなっており、企業がその存在意義に社会や環境へのインパクトをしっかり組み込み、パーパスでリードすることを求めている。

こうした消費者の動きに、企業も追いついてきている。これまでに、ミスフィットジュースと食品大手のバルドー・スペシャリティ・フーズのような、社会的企業〈ソーシャルエンタープライズ〉大手企業とのユニークなパートナーシップも見てきたし、CVSヘルス・コーポレーションがたばこ販売中止へと大きく舵を切った結果どうなったかや、ボランティア活動への参画がティンバーランドと消費者のあいだにより親密な結びつきをもたらした過程も見てきた。

消費者がパーパス・ドリブンなブランドを支持する理由をより深く理解するため、コーンでは2018年に、アメリカの成人の人口構成を反映した1,006人を対象にアンケート調査を行った。そして、「パーパス・ドリブンなブランド」を、強力な環境活動の実践や重要な社会的課題のサポート、社会への還元など通して「利益を生みだすこと」と、「世界に良い影響を与えること」の両方にコミットしている組織であると定義した。

この調査では、消費者がパーパスでリードするブランドを好むことが示されたのみならず、その企業へのコミットメントがどれほど深いのかも示された。さらに、パーパス・ドリブンなブランドが享受する3つのベネフィットも明らかになった。それは、「消費者とのより深い絆の構築」「消費者基盤の拡張」、そして「ブランドメッセージを増幅してくれる代弁者の獲得」である。

パーパスは、企業と消費者のあいだにより深い絆を構築する

パーパスとはロイヤルティの再定義である。企業がパーパスでリードすることで、企業は消費者とのあいだに深い感情的な結びつきを作り出すことができ、その絆が製品の機能的属性を越えたものとなる。事実、ベン&ジェリーズの[前]CEOヨーステイン・ソルヘイムは、共同創設者ベン・コーエンから、パーパスには「ファンとのあいだに最強の絆を作り出す」力があると繰り返し聞かされていた。

それは、すべて消費者の心が起点となるからだ。調査によると、アメリカ人の77パーセントが従来のブランドよりもパーパス・ドリブンなブランドに強い感情的な結びつきを、67パーセントが従来のブランドよりもパーパス・ドリブンなブランドのほうが自身や家族のことを気にかけてくれていると感じている。

ブランドへの情熱はブランドへの忠誠にもつながる。消費者の79パーセントが従来企業よりもパーパス・ドリブンな企業のほうに忠誠をつくすと回答し、70パーセントがパーパス・ドリブンな企業に関わっていることを誇りに思っていると答えている。だからこそ消費者は企業ロゴが目立つものを着けるなどして、企業へのロイヤルティを示すのである。

アメリカ人は、お気に入りのパーパスを掲げるブランドの支持者であるだけでなく、ときには味方にもなる。アメリカ人の73パーセントはパーパス・ドリブンな企業を悪く言う人がいたとしてもその企業を擁護すると答え、67パーセントがもしパーパス・ドリブンな企業が間違いを犯したとしても、そうでない企業の場合よりも寛容になれると回答した。このように、パーパスは取引を超えた関係性を構築するのみならず、良いときも悪いときもずっとブランドに寄り添ってくれる忠実な消費者を惹きつけることで、ブランドの将来を確かなものにしてくれるのだ。

ザ・ノース・フェイスが最近発売したペットボトルを原料にした製品は、パーパスがいかにプライドとブランドの親和性を高めるかを教えてくれる。アメリカの国立公園でリサイクルされるペットボトルに新たな命を与えるために、ノース・フェイスは国立公園局と手を組んだ。このプログラムではすでに、ヨセミテ、グランドティトン、グレートスモーキーマウンテンといった国立公園から16万ポンド(7,254キログラム)もの使用済みペットボトルを回収、それらをTシャツやトートバッグのコレクションとして製品化している。Tシャツには、ノース・フェイスのロゴとともに「保護しよう(Worth Protecting)」「大地を守ろう(Defend Our Land)」といったフレーズが描かれている。

パーパスは消費者基盤を拡張し、競争優位を確立する

パーパスでリードするブランドは、新たなレベルのロイヤルティを獲得できるだけでなく、新規市場への参入や製品ラインの拡張など競争上の優位性をも得ることができる。

コーンの調査によると、ブランドに情熱を注ぐ人の75パーセントはお気に入りのパーパス・ドリブンな企業が展開する他のカテゴリー製品も試したいと考えており、新規消費者の66パーセントは従来型企業の製品よりもパーパス・ドリブンな企業の製品を試したいと思っている。さらに、アメリカ人の57パーセントは、パーパス・ドリブンな企業の製品ならば多少高くても買うと回答している。この結果は、特に従来型企業の製品との競争において、パーパスが強い差別化要因となることを示している。

トムスは、靴を1足買うと、もう1足が必要とする誰かに届くというシンプルなビジネスモデルからはじまった。現在では、ブランドの象徴となった「ワン・フォー・ワン(one-for-one)」というモデルのもと、アパレル、メガネ、バッグ、コーヒーまで取り揃えている。そうすることができたのは、忠誠心の高い消費者たちの思いの根底に、愛着のあるブランドでさまざまなカテゴリーの製品を試してみたいという望みがあったからだ。そして、そのおかげでトムスは、現在我々の知る限り圧倒的なソーシャル・インパクトを生み出す存在となった。ムーディーズ・インベスターズ・サービスによれば、Inc.誌に報道されたように、トムスの収益は3.92億ドル(約400億円相当)、そのプロセスにおいて少なくとも5,100万人にプラスのインパクトを与えている。

パーパスは、ブランドメッセージを増幅してくれる代弁者を獲得する

パーパスでリードするブランドには、ユニークで説得力のあるストーリーがあり、消費者もそのストーリーを認知している。また、アメリカ人の68パーセントは、パーパス・ドリブンでない企業よりも、パーパス・ドリブンな企業のコンテンツを自身のソーシャル・ネットワークでシェアすると回答し、その支持はオンラインとオフライン両方におよんでいる。

コーンの調査から、アメリカ人の78パーセントが他人にパーパス・ドリブンな企業の製品を買うように勧め、73パーセントがその企業の情報やストーリーを他の人にシェアすることもわかっている。しかも、消費者は企業や製品を勧めるだけでなく、その企業が作り出そうとしているプラスのインパクトを広めるのに、自分もひと役買いたいと思っている。たとえば65パーセントは、企業がサポートしている社会的課題に自分も声を上げると回答した。

企業は、それら支持者たちに働きかけてブランドメッセージをさらに増幅させることもできるし、まったく新しいオーディエンスに対して組織を「後押し」してもらうこともできる。そして、パーパス・ドリブンなブランドに内包されるこの代弁者集団には、あなたの大義のために人を集め巻き込む心づもりがある。

パタゴニアが、ベアーズ・イヤーズとグランド・ステアケース・エスカランテのナショナル・モニュメント(国定文化遺産保護地域)を守るためにトランプ前大統領を訴えるという大胆な行動に出たとき、ブランドの忠実なフォロワーたちは一丸となってネット上で論戦を繰り広げ、パタゴニアを支援した。事実、2017年後半のソーシャルメディア上の会話をブランドウォッチでスキャンしたところ、このトピックまわりで使われたハッシュタグ全体の62パーセントは、パタゴニア独自のハッシュタグ#MonumentalMistakeで、メンションも11,300以上あったのに対し、2番目に多く使われたハッシュタグ#StandwithBearsEarsは10パーセントにすぎなかった。

先進的なブランドは、パーパスでリードする

現代は、アマゾンだけでも毎日平均130万もの製品がオンラインストアに追加されていく時代だ。消費者には大量の選択肢がある。その影響もあってか、アメリカ人はこれまで以上に支持するブランドを厳選するようになってきた。そして、今までにも増して、自分の価値観に沿うブランドから買いたいと考えるようになってきている。

パーパスでリードするブランドには、多くの利点がある。従来のロイヤルティを超えてさらに深い関係を築くことができるので、新規市場への参入がかなり容易になり(したがって大きなマーケットシェアも獲得でき)、ブランドメッセージを声高にシェアしてくれる忠実な代弁者集団を惹きつけることもできる。だからこそ、先進的なブランドは、単なるマーケティング手法としてではなく、短期的・長期的な成功のためのビジネス戦略として、パーパスをビジネスやブランドやそれらがもたらす体験の中に埋め込むのである。


【翻訳協力】トランネット
【原題】Leading with Purpose:The New Business Norm? (Stanford Social Innovation Review, Aug. 15, 2018 )
【写真】Magda Ehlers on Pexels

ホイットニー・デイリー Whitney Dailey

PR会社ポーター・ノベリ/コーンコミュニケーションズ副社長。

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