
「わたし」から物語を始めよう
※本稿はスタンフォード・ソーシャルイノベーションレビューのベスト論文集『これからの「社会の変え方」を、探しに行こう』からの転載です。
井上英之 Hideyuki Inoue
世界は今、新しい「社会の変え方」を必要としています。
この本は、『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー』(SSIR)という、米国スタンフォード大学のビジネススクールから生まれた雑誌の数々の記事から、そのヒントとなる10本の論文を集めたものです。
きっと、この本を手にしたあなたは、日々さまざまなニュースにもやっとしながら、何とかしたい、何とかなってほしいと思いながら、自分との間に距離を感じることも多いのではないでしょうか? なかにはもちろん、すでに「これを解決したい!」と何かを始めている人もいるかもしれません。
現在の世界では、地球温暖化から、社会の格差拡大や性別の概念まで、いくつもの大きな課題や変化が現れています。そのなかには、いつまでも「問題だ」と言うばかりでもいられないことがたくさんあります。新型コロナウイルスの感染だって、まさに日々私たちに迫ってくる大変な問題です。
同時に、じゃあ、「わたし」の毎日はどうしよう?と思うかもしれません。仕事のこと、学校のこと、家族のこと……あまりにも慌ただしく、世の中のことにかまっていられないと感じるのもよくわかります。とはいえ、今迫っている問題をよりよい方向に進めていかないと、社会全体としてこれまでの日常すら維持できなくなるかもしれません。
何とかすることは、できるのでしょうか?
誰しも、悪意があるわけではありません。あるとき生活習慣病になってしまった人でも、毎日の生活のなかで、病気になりたいという意図があったわけではありません。環境問題だって、地球環境の破壊を日々の目標にしている人なんて、まずいません。
だからこそ、今、私たちは、何かのやり方を変えないといけない。これからの人生や、より多くの人たちや、次の世代にとっての明るい未来のためにも。
では、何のやり方を変えるのでしょうか? それは自分の生活習慣かもしれません。会社での働き方や意思決定の進め方、学校での学び方かもしれません。さらには、家族のあり方や人生の優先順位かもしれません。こういう1つひとつのやり方が重なり、それぞれの足元から世の中が変わっていく。ひとりの偉大なリーダーが皆を引っ張って起こす変革や、政府の政策の転換にとどまらない、こうした小さなことの積み重ねが、今必要な「社会の変え方」のひとつなんだと、私は考えています。
この本でご紹介するのは、そんな「社会の変え方」のヒントの数々です。
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