コミュニティの声を聞く。
Vol.05
気候変動の問題を解決する取り組みが女性に過度のケア労働を強いることにつながるのを避けるにはどうしたらよいか。※本稿は、SSIR Japan 編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 04 コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装』より転載したものです。ジェームズ・モリッシー|シェリリン・マクレガー|シーマ・アローラ゠ヨンソン「気候変動、環境および災害リスク削減」をテーマに掲げた、第66回国連(UN)女性の地位委員会が、2022年3月25日に閉会した。委員会では、未成年者から成人まで幅広い年齢層の女性たちが気候変動による不利益をより被りやすい状況にあること、持続可能な開発を実現するうえで女性たちが果たすことになる中心的役割が確認された。委員会の主張は事実であり、重要な意味を持つ。しかし、国際NGOオックスファムが発表した新しい報告書は、この課題に立ち向かうためにはケア労働に焦点を当てなければならないと主張する。そうでなければ、気候変動とジェンダーの関係をめぐる問題への取り組みは、ジェンダー不平等を解消するどころか、固定化することになりかねないからだ。「ケア労働」は、生命・共同体・環境の回復と維持のために行われる、日常的な労働や育児や介護のことを指す。これには、有給と無給を問わず、人の世話をする直接的な活動(入浴、食事の世話、精神面における健康への配慮など)はもちろん、ケアに付随する間接的な活動(調理、掃除、買い物など)も含まれる。公共政策の対象となるのはほとんどの場合、金銭的価値に換算できる「生産的」労働で、ケア労働の多くは見過ごされている。ケア労働と生産的労働のあいだに明確な境界線はなく、同じ人がその両方に携わる。世界中のどこを見ても、ケア労働に携わるのは女性が多い。調査データによると、女性は男性よりも総労働時間が長い傾向にあるが、これは女性のほうがケア労働の負担が重いからである。また、ケア労働が軽んじられているせいで、女性は経済的、政治的平等を獲得する機会を妨げられていると感じている。他のことに割ける時間がほとんどなく、収入を得るために働いたり、教育を受けたり、市民活動に参加したり、余暇を楽しんだりすることができない。こうした状況が「ケア労働の危機」を招いている―― 。研究者やフェミニスト団体だけでなく、UNや世界銀行などの主要機関も続々と声を上げている。社会と家庭のケア労働の格差は改善されつつあると一部のエビデンスは示しているが、気候変動によってケア労働の危機が悪化する可能性も高まっている。事態は差し迫っており、ケア労働における格差問題に取り組むことなしに、気候変動のもたらす不公平な影響を解決することはできない。
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