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支配型リーダーがチームワークを阻害する

支配型リーダーがチームワークを阻害する

威張り散らす上司は部下に「ゼロサム思考」を植え付けチームに支え合いではなく足の引っ張り合いをもたらす。

※本稿は、SSIR Japan 編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 02 社会を元気にする循環』より転載したものです。

チャナ・R・ショーンバーガー Chana R. Schoenberger

マネジャーのリーダーシップスタイルは、チームのコラボレーションにどのような影響を及ぼすのだろうか。チームの生産性と意欲を高めるためには従業員同士の密接な連携が必要だが、従業員はリーダーからヒントを得て行動する。リーダーが他者に対して支配的な態度で接している場合、部下は、自分が仕事で成功するには他の人が失敗しなければならないと考えるようになる可能性がある。

このような「ゼロサム思考」に注目したのが、デューク大学フュークア経営大学院のヘマント・カッカー助教(経営論・組織論)と、ロンドン・ビジネススクールのニロ・シヴァナサン准教授(組織行動論)が新たに発表した論文だ。著者2人は8つの個別研究を用いながら、支配型リーダーは、スタッフが同僚をサポートしない方向に誘導している可能性があり、それがチームワークの妨げとなっていることを明らかにした。

「この研究は、支配型リーダーが部下のゼロサム思考を強めることで、チーム内の助け合いに意図せぬ結果をもたらしていることを浮き彫りにした」と研究者らは書いている。

この論文では、社会的学習理論に基づき、リーダーがどのように他者と関わりながら組織のなかで昇進していくかを部下が観察し、まねると仮定した。そしてマネジメントスタイルを、「人望型」と「支配型」の2タイプに分けた。人望型リーダーは、知識を共有することで周囲にそのリーダーについていきたいと思わせるのに対し、支配型リーダーは、強引な方法で部下を自分の思い通りに動かそうとする。

「支配型リーダーは自己主張が強く競争志向であることによって他者に影響を与えるため、ゼロサム思考に基づいた成功という認識を部下の心理に植え付ける」と研究者は述べている。「ゼロサム思考の社員は、他人の犠牲のもとにしか自分の昇進はないと思い込みがちだ」。

この実験では、上司によって異なるリーダーシップのもと、社員がどのように行動するかを観察し、同僚をサポートすることに対してどのように思っているのかを確認する一連の検証が行われた。たとえばある実験では、対象者に「同僚の悩みや心配事に耳を傾ける時間をとるか」や「仕事が遅れている同僚を手伝うか」を聞いた。

カッカーによると、最も興味深い発見は、「リーダーのタイプが異なるだけで、部下にもたらす心理的影響が異なる」ことだ。「他人よりも自分の利益を優先する」上司のもとで働く部下は、それが社内で出世する方法だと学習し、周囲にもそのように接するようになる。

この論文は経営学と心理学の観点から書かれたものだが、問いの発端は政治的領域から来ている。インド出身のカッカーは、ロンドン・ビジネススクールでの論文執筆時、インドでヒンドゥー教徒とイスラム教徒の宗教対立が激化していることに注目した。同様の政治的・宗教的な対立は、スリランカやブレグジット論争時のイギリス、トランプ政権下のアメリカでも起こっていた。それまで平和的に共存していた人々が、隣人を敵視するようになることに、カッカーは違和感を覚えたのである。

「なぜこのようなことが起こったのか、なぜ人々は、他人の損の上に自分の得があると考えるようになるのか、その理由を知りたかった」と彼は振り返る。

カッカーはまた、大学院に入る前にインドでソフトウェアの開発者として働いた経験から、こうも述べている。「2年間働いた経験から、自己主張が強く支配的な上司のもとで働くのがどのようなことか、ある程度わかっていた」。職場でどのように行動すべきかについて、部下がリーダーを参考にしているという研究文献はずっと以前からあったが、支配型リーダーが部下のゼロサム思考を生み出していることを本論文が示したことで、この分野の研究が前進したとメリーランド大学スミス経営大学院のスブラマニアム・タンギララ教授(経営学)は指摘する。

「なぜ職場が、殺伐として過度に競争意識をあおり、社員同士の支え合いのない場になってしまうのか、我々はしばしば不思議に思っていた」とタンギララは言う。「この論文によれば、成果を出すためには支配的にふるまう必要があると感じているリーダーにその原因がある」。

自己主張の強いマネジメントスタイルの上司は常にいるものだが、組織はどうすれば支配型リーダーに起因する問題を避けられるだろうか。企業のなかには年次の相対評価でトップ数パーセントだけを評価する社員表彰を廃止するところもある一方で、低評価の社員がクビになる職場もある。このような容赦ない慣行をやめれば、協調性が育まれ、組織力や団結力も上がるはずだとカッカーは述べている。

【翻訳】五明志保子
【原題】The Negative Influence of Dominant Leaders(Stanford Social Innovation Review, Spring 2022)

チャナ・R・ショーンバーガー

ニューヨーク在住のジャーナリスト。ビジネスや金融、学術研究に関する記事を執筆している。

参考論文
Hemant Kakkar and Niro Sivanathan, “The Impact of Leader Dominance on Employees’ Zero-Sum Mindset and Helping Behavior,” Journal of Applied Psychology, forthcoming.

翻訳者

  • 五明志保子
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