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横断型コラボレーションを襲う5つの岐路とその乗り越え方

横断型コラボレーションを襲う5つの岐路とその乗り越え方

社会的インパクトを生むためには、多様なステークホルダーをつなぐネットワークが欠かせない。しかしネットワークだからこそ直面する危機があり、それを乗り越えるためには日常からの備えが必要だ。

※本稿は、SSIR Japan 編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 04 コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装』より転載したものです。

ミシェル・シューメート|キャサリン・R・クーパー

本稿の共著者であるミシェル・シューメートが訪問したシェアオフィスは、広くてモダンな装いだった。そこには、ザ・リテラシー・オーガニゼーション(仮名)に加盟する多くの団体が拠点を置いていた。

ザ・リテラシー・オーガニゼーションは、100を超える教育関係の非営利団体からなるネットワーク組織である。

ミシェルはオフィスを見学した後、同ネットワーク事務局長のジェリー(仮名)とともに役員会議室に向かい、ある相談をもちかけられた1。2人は運営費やインパクト測定の方法など、ネットワーク組織にありがちな課題について話し合った。実はジェリーは、自分たちのネットワークが生み出している社会的インパクトの評価・測定をミシェルに手伝ってもらいたいと考えていた。

しかし残念ながら、ミシェルはこう言った。「このネットワークの掲げるミッションにも共感しますし、オフィスも素晴らしい環境です。ただ、ひいき目に見ても、このネットワークの実際の活動は、みなさんが自分たちで言っているほどの社会的インパクトを生んではいないと思います。ネットワークの加盟団体は個別ではインパクトを生み出せているのかもしれませんが、全体としては生み出せていないでしょう」。

ミシェルは代案として、ザ・リテラシー・オーガニゼーションが参加団体向けに実施しているキャパシティビルディング(組織能力の開発)がこのネットワークの真の価値だと思うので、それを評価・測定することなら協力できると申し出た。ただし、「市全体の教育面のアウトカム(成果)向上」という社会的インパクトをザ・リテラシー・オーガニゼーションの功績とうたうことは不誠実に思える、と釘を刺した。

ジェリーたちが資金提供者やネットワークへの参加を検討中の団体を得意気に案内していた素晴らしいシェアオフィスは、このミーティングからほどなくして、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響で閉鎖された。そして、2020年5月25日にジョージ・フロイドが殺害されたことを受けて黒人差別への抗議運動が広まると、このネットワークの加盟団体の人種構成が白人に偏っていることが露呈し、多様な人種や経済状況の人が住む市において、白人ばかりのメンバーで格差の是正に取り組んで果たして社会的インパクトをもたらせているのかを問い直す必要に迫られた。さらに、ある大口資金提供者が経営危機のため寄付を減額してネットワークの運営費が逼迫した。こうした事態が重なった結果、経営再生の目処が立たなくなり、ジェリーなど立ち上げに携わったリーダーたちの願いもむなしくネットワークは解散した。

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翻訳者

  • 桑田由紀子
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